第264号
現行の第3期海洋基本計画は2018年5月に策定され、本年で5年が経過します。昨今の海洋に関する情勢の変化を勘案し、必要な変更を加えるため、2023年度からの5年間を対象とした第4期海洋基本計画(案)が取りまとめられ、そのパブリックコメントが今月2日に締め切られました。海洋産業界としては、第2部「5.海洋の産業利用の促進」の動向が気になるところです。今後、閣議決定を経て新たな計画がスタートすることになります。
======= 目 次 =======
《一般情報》
1.国交省、洋上風力(作業員輸送船、コンクリート製浮体)でガイドライン策定
-洋上風力発電施設向け作業員輸送船(CTV)の安全設計ガイドラインを策定
-コンクリート製浮体式洋上風力で設計施工ガイドラインを策定
2.国交省、洋上通信の利用に関するアンケート調査結果を公表
3.JAXA・GPI、洋上風力発電分野利用の検討に関する協定締結
4.JERA、ベルギーの大手洋上風力発電事業者を買収
5.JFEエンジ・北陸電力、富山県入善町での一般海域洋上風力発電事業へ出資
6.東電リニューアブルパワー子会社、英国洋上風力に係る海底リース権落札
7.シンガポール沖でNYK、九電みらい等が参画の潮流発電装置が運用開始
8.米政府、洋上風力発電の展開促進及び拡大戦略を発表
《海産研関係情報》
1.2023年度グループ調査研究7件、会員の参加募集中!
2.4/14、第425回海洋産業定例研究会、ClassNK洋上風力発電に関する認証等
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《一般情報》
1.国交省、洋上風力(作業員輸送船、コンクリート製浮体)でガイドライン策定
-洋上風力発電施設向け作業員輸送船(CTV)の安全設計ガイドラインを策定
国土交通省は、国内の洋上風力発電施設の建造・維持管理において用いられる作業員輸送船の安全設計ガイドラインを策定したことを、3月31日に発表した。日本周辺海域における洋上風力発電施設の建造・維持管理において、安全性を担保しつつ、高い稼働日数が期待されるCTVを設計するための留意事項を取りまとめたガイドラインとなっている。これにより、CTVの国内建造を促進することで、洋上風力発電施設の導入拡大が期待されるとしている。
-コンクリート製浮体式洋上風力で設計施工ガイドラインを策定
国土交通省は、コンクリート製浮体式洋上風力発電施設の設計施工ガイドラインを策定し、浮体式洋上風力発電施設技術基準安全ガイドラインに追加したことを3月31日に発表した。安全性の確保と低コスト化を両立した、コンクリート製支持構造物の設計手法を明確化することで、浮体式洋上風力発電施設の導入が拡大することを期待するとしている。
https://www.mlit.go.jp/report/press/kaiji07_hh_000273.html
2.国交省、洋上通信の利用に関するアンケート調査結果を公表
国土交通省は、洋上における通信環境の改善等の検討のため、事業者及び船員を対象にアンケート調査を実施し、その調査結果を3月30日に発表した。調査結果の概要では、以下のような回答結果が示された。海上ブロードバンドサービスへの関心について、事業者の8割以上が関心を持っており、7割以上が船内のインターネット環境を改善したいと回答。現在乗っている船舶におけるスマートフォンの通信状況について、船員の約7割以上が「つながらないことがある」または「ほとんどつながらない」と回答。「船員を職業とする上で、洋上で電話やインターネットがつながるか否かは、どの程度影響するか」という質問について、約5割が「大いに影響する」、約4割が「影響する」と回答。特に、年代が若いほど、「大いに影響する」と回答する傾向が見られた等との結果が示されている。
https://www.mlit.go.jp/report/press/kaiji04_hh_000266.html
3.JAXA・GPI、洋上風力発電分野利用の検討に関する協定締結
(株)グリーンパワーインベストメント(GPI)と国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、国立研究開発法人科学技術振興機構の受託事業「超広帯域アンテナ・デジタル技術を用いたレーダ及び放射計の開発と実証」の一環として、「超広帯域電波デジタル干渉計の洋上風力発電分野利用の検討
(SAMRAI:Scanning Array for hyper-Multispectral RAdiowave Imaging)」に関する協定を3月13日に締結したことを発表した。GPIとJAXAは同協定の下「SAMRAI」による海上風速データを「風の地図」として可視化し、洋上風力発電事業における適地選定の効率化に向けた検証を実施するとしている。
https://www.jaxa.jp/press/2023/03/20230313-1_j.html
4.JERA、ベルギーの大手洋上風力発電事業者を買収
3月22日、(株)JERAは、子会社を通じてベルギーの洋上風力発電事業者Parkwind社の株式の100パーセントを約15.5億ユーロで取得することとし、同日、同社の親会社であるVirya社との間で、株式売買契約を締結したことを発表した。同社は、これまで洋上風力発電事業で、10年以上の開発・建設・運転にかかる実績を有しており、ベルギーで4つの洋上風力発電プロジェクト(同社持分容量42万kW)の運営、ドイツで建設中の洋上風力発電プロジェクト(同前18万kW)を手掛けている他、欧州を中心に開発中の洋上風力発電プロジェクト(同前452.6万kW)を保有しているとしている。
https://www.jera.co.jp/information/20230322_1109
5.JFEエンジ・北陸電力、富山県入善町での一般海域洋上風力発電事業へ出資
JFEエンジニアリング(株)と北陸電力(株)は、富山県下新川郡入善町沖において計画されている洋上風力発電事業に出資参画することを3月13日に発表した。同事業は、(株)ウェンティ・ジャパンが出資する「入善マリンウィンド合同会社」が、進めている日本初の民間資金による一般海域での洋上風力発電事業で、入善町沖に 3,000kW級の風車を3基設置する。2023年8月竣工、9月運転開始を予定している。
https://www.jfe-eng.co.jp/news/2023/20230313.html
https://www.rikuden.co.jp/press/attach/23031301.pdf
6.東電リニューアブルパワー子会社、英国洋上風力に係る海底リース権落札
東電リニューアブルパワー子会社Flotation Energy社(本社:英国スコットランド)が、Vårgrønn社(本社:ノルウェー)と共同で、Crown Estate Scotlandの実施する洋上風力Innovation and Targeted Oil and Gasラウンドにおいて、Green VoltとCENOSの2案件、計191万kWの浮体式洋上風力発電設備を独占的に開発する海底リース権を落札したことを3月27日に公表した。今後、2案件について風況・海底調査や設備設計等を実施し、2028年と2030年の浮体式洋上風力発電所の営業運転開始に向けて、開発を進めるとしている。
https://www.tepco.co.jp/rp/about/company/press-information/press/2023/1665057_19901.html
7.シンガポール沖でNYK、九電みらい等が参画の潮流発電装置が運用開始
シンガポールの海洋再生可能エネルギー事業会社であるBluenergy Solutions社は、3月29日付のニュースリリースで、シンガポール本島から約14km離れたサトゥム島沖において、同国の潮流発電実証事業の一環として、東南アジア初となる潮流発電装置の運用を開始すると発表した。この実証事業には、我が国から日本郵船(株)、九電みらいエナジー(株)等が参画しており、小型の潮流発電機(7kW×4基)を設置して灯台に電力を供給する計画で、実証期間は6カ月とのこと。
https://www.thebest.energy/post/bluenergy-launches-its-tidal-energy-proof-of-value-project-off-raffles-lighthouse
https://www.nyk.com/news/2023/20230329_01.html
https://www.q-mirai.co.jp/files/optionallink/00000396_file.pdf?1680754645
8.米政府、洋上風力発電の展開促進及び拡大戦略を発表
米国エネルギー省(DOE)は、3月29日付のニュースリリースで、30GWの洋上風力発電を展開するというバイデン政権の目標を達成するために、同省の取り組みを包括的にとりまとめた戦略「Advancing Offshore Wind Energy in the United States」を発表した。同戦略は大きく以下の4つの柱で構成されており、それぞれについて経済的、公正、環境的に持続可能な方法で支援するとのこと。
・着床式洋上風力発電に関しては、2030年までに発電コストを1MWhあたり73ドルから51ドルに引き下げ、国内のサプライチェーン形成を支援する。
・浮体式洋上風発電に関しては、2035年までにコストを70パーセント以上削減して1MWhあたり45ドルにし、設計及び製造段階における米国のリーダーシップを確立する。
・大規模な洋上風力発電の展開に向けて、信頼性と回復力に優れた送電方法を実現する。
・広範な電化と脱炭素化のために、蓄電、エネルギー変換技術を拡張する。
https://www.energy.gov/articles/doe-releases-strategy-accelerate-and-expand-domestic-offshore-wind-deployment
https://www.energy.gov/eere/us-department-energys-strategy-advance-offshore-wind-energy-united-states
《海産研関係情報》
1.2023年度グループ調査研究7件、会員の参加募集中!
当協会の2023年度グループ調査研究のテーマは下記の7件となっています。会員の皆様からの多数の参加をお願いいたします。参加資格は1~5は正会員のみとなっていますが、賛助会員でも正会員への移行を前提に参加は可能です。また、6、7については正会員・賛助会員ともにご参加をいただくことが可能です。よろしくご検討いただければと存じます。これらの事業内容についてのお問い合わせは、事務局まで、遠慮なくお申し越しください。(メールアドレス:rioe@rioe.or.jp)
1)「洋上風力発電等の漁業協調の在り方に関する提言研究」
2)「浮体構造物(マリンフロート)の活用に関する調査研究」
3)「重要遠隔離島及び周辺海域の利用・保全方策に関する調査研究」
4)「海洋自然エネルギー利用技術の実用化プロジェクトに関する研究」
5)「洋上風力発電等の主力電源化に資する海底送電線網の実現に向けて」
6)「浮体式洋上風力発電の実用化に向けて」
7)「ブルーカーボンの実用化及び普及に向けた調査・研究」
2.4/14、第425回海洋産業定例研究会、ClassNK洋上風力発電に関する認証等
4月14日午後、第425回海洋産業定例研究会を以下のテーマと内容で開催する。「洋上風力発電に関する認証等の取組みについて」、一般財団法人日本海事協会環境・再生可能エネルギー部長赤星貞夫氏より、ClassNKでの洋上風力発電に関する取組みについて、特に、認証に関係する事項を中心に風車の発電コスト等についてもお話をいただく。会場及びWeb会議サービス(オンライン)によるハイブリット開催。参加費は、海産研会員・教育研究機関・官公庁・自治体・団体等に所属の方=無料、非会員(民間企業等に所属の方)=11,000円(消費税込み)/人。聴講希望の方は、4月11日(火)までに所属・氏名等を以下のURL内のリンクよりお申込み下さい。(会場、Webともに定員になり次第締め切りといたします。)
https://rioe.or.jp/rioehp7_01.html